■トマソンとは


トマソンとは、赤瀬川原平氏が著書『超芸術トマソン』の中で『不動産に付着していて美しく保存されている無用の長物 』と定義されているものです。

例えば「上っても降りる以外に何もない階段」や「塗りたてられて外枠だけが残った門」、あるいは「高所の壁に足場もなく張り付いたドア」・・・。このようなものをトマソンと呼びます。

分かりにくければ「VOWみたいなもの」とでも言いましょうか。


■トマソンの分類

無用階段
純粋階段ともいわれる。上って下りるだけの階段。


無用門
塞がれてしまってもいまだ門としての威厳を保っている門。


ヒサシ
庇。無用庇ともいう。下にあった窓や扉が無くなってしまったにもかかわらず、雨を防いでいる庇のこと。

無用窓
塞がれた窓。塞ぎ方に念が入っているものが美しい。


ヌリカベ
無用門や無用窓と重なる。塞いだ窓や門の跡。コンクリートで塗り込めても完全には隠しきれていない領域。周囲との微妙な差異を楽しむ。


原爆タイプ
平面状のトマソン。建物などの痕跡が、壁にシルエット状に残っているトマソン。


高所
物体そのものは正常だが、普段ある場所よりも高いところに存在しているために違和感をもたらす構造物。二階にある取っ手付のドアなど。

でべそ
塗り込めた壁からわずかに飛び出た、ドアノブや蛇口などの小さい突起物。


ウヤマ
看板や標識の文字が一部消えているもの。最初のトマソンが「?はウヤマ/卯山?店」というものだったのでこの名前が付いた。

カステラ
壁面から飛び出した直方体状の部分。出窓の塗りつぶしなどで発生する。また、逆に引っ込んでいる部分は「逆カステラ」と呼ばれる。

アタゴ
道路脇にある意味不明の突起物。車の駐車禁止のため役に立っている可能性もある。

生き埋め
路上のトマソンの一部がコンクリートなどで埋められているもの。

地層
地面に断層が形成されたもの。同一箇所を複数回工事したときなどに見られる。

境界
ガードレール、柵、塀など、境界を表示するトマソンで、意味が即座に理解しがたいもの。

ねじれ
通常、まっすぐ直角に作られている建築物のなかにおいて、微妙なねじれを有するトマソン。

阿部定
途中で切られた電信柱の跡。命名は阿部定事件より。

もの喰う木
木が、柵やワイヤーなどを飲み込みながら成長している様子。

無用橋
埋め立てられた川に架かる橋など、無用となっている橋。

純粋タイプ
分類不能で、実用的意味が考えられないもの。空けると壁面の「純粋シャッター」など。


蒸発
看板の退色や、記念碑の一部損壊などで、もともとの意味がわかりにくくなっているもの。

※参考:ちくま文庫『トマソン大図鑑』



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